日本財団 図書館


 

正する必要がある。このとき、どのような補正のための重み関数が適当かについては、論理的根拠を伴った重み関数に関する定説が無い現状においては、実際に操船に携わった者の意識感覚を基に推定するのが実際的であろう。
著者や操船経験者の討議をもとにすると、正面にある障害物に対して感じる危険感については重みは1であることは間違いない、同じ障害物が正横もしくは少し後方にあって視野から消えると危険感は0かというとそうとは言えない、正横の障害物に対してはまだかなりの危険感が残るように思う、しかし、それが真後ろにあるとなると危険感は0といっても差し支えない、といった意見交換を通じて、結局、自船正面で1、真後ろで0となるような重み関数cos(1/2)φを得る結果となった。

 

(2)環境ストレス値の算定
1)水路幅とストレス値
図?-3−2は、長さ100mの船が10ノットの速力で、幅に制約をうける平行水路の中央を直進航行するときの環境ストレス値を求めた結果を例示している。図には、水路幅を100m,300m,500mと変化させたときの計算結果を重ね描きしている。
図?−3−2の左上図は、平行水路を航行中に現針路を中心に±900の範囲に渡り危険顕在(この場合は護岸への衝突)までの時間余裕を針路1°ごとにサーチした結果を示している。なお、図中プロットの記号は見分けやすいように5°ごとに付している。これを見てわかるように、水路中央を直進する現針路上では危険顕在までの時間余裕は無限にある反面、針路が振れると護岸衝突への危険が迫る様子がみてとれる。しかし、水路が広い方が同じ針路の振れに対しても時間余裕は大きい。
図?−3−2の右上図は、各針路ごとにサーチした時間余裕に対する操船者の危険感を式(1)のもとでSJLの値に置換したものである。そして、図?−3−2の右下図は、±3の範囲で与えられるSJLの値を0〜6の値に尺度変換したうえで方向重み関数を乗じた結果を示している。この図において特徴的なことは、航行水域を制約する平行護岸に対し操船者が感じる危険感の対象が集中する箇所が明確に現れる点である。通常、操船者が平行水路を航行するとき前方から後方までの護岸の全域にわたって満遍なく危険感を抱くのではなく、操船者が注視する危険の対象が斜め前方にあることからも、この指標は操船者の危険感をうまく表現するものとみてよさそうである。
図?−3−2の左下図は、横軸に時間経過、縦軸に0〜6に尺度変換した操船者の危険感を針路1°ごとに±90°の範囲で総計した環境ストレス値をとっている。この場合は平行水路航行を計算対象としたので環境ストレス値は」定値が継続する結果を示すが、水路幅が広いほどストレスが低下する様子がよくわかる。
図?-3−3は、長さ100mの船が種々の広さの平行水路の中央を直進航行するときの環境ストレス値を算定した結果を示している。なお、自船速力は10ノットと5ノットの2とおりとした。これによれば、長さ100mの船が10ノットで航走するときは水路幅は500m以上でないと環境ストレスは“negligible”の状態にならないが、その船が速力を

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION